*大序 所は鎌倉の鶴岡八幡宮。 将軍足利直義が、新田義貞の兜を塩谷判官の妻・顔世御前に鑑定させようとしている。 居合わせる高師直は顔世御前に横恋慕していますが、顔世からは良い返事が返ってこない。 虫の居所の悪くなった師直は腹いせにそばにいる桃井若狭之助に意地悪くあたるのだった…。 またここで注目すべきは、、それぞれの登場人物の衣裳の色。 直義の金銀は将軍という他者とは一線を画する格、師直の黒は悪、若狭之助の水色は正義と若さ、判官の黄は若さと危うさをそれぞれ表現している。 *二段目 大序の鶴岡八幡宮で高師直から恥をかかされ、憤まんやる方ない桃井若狭助。 若狭助は師直を切る決意をし、家老の加古川本蔵も表面は主人に同意して“見事本懐を”と松の枝を打ち落として見せるが、お家の存続を第一と考える本蔵は主人に内緒で師直に賄賂を贈り、彼に謝ってもらうしかないと考える。 *三段目 血相を変えて迫る若狭助に、本蔵の思惑通りに師直は平謝り。 桃井家の危機は回避されたが、若造に頭を下げた師直のうっぷんは、やがて塩谷判官に向けられる。数々の罵詈雑言を浴びせられても必死に耐えていた判官も「鮒侍」とまでいわれては堪忍袋の緒が切れて、殿中での刃傷にいたってしまうのだった…。 この段に登場する鷺坂伴内はおかしみの道化(歌舞伎ではチャリという) キーキーと高い声で、いかにも威厳のなさそうな様子。 若狭之助の家老・加古川本蔵が実は師直に賄賂を持ってくるのだとは知らずに、家来たちを集めて本蔵に切りかかる練習をする。上司が上司なら部下も部下で、数人いならんで何回もトンチンカンなお稽古をするところがおかしみ。 しかし、本蔵が進物を持ってきて伴内の着物のたもとに文字通りの“袖の下”を入れると、ゲンキンに態度がガラリと変わる。 そしていよいよ松の間刃傷。緊迫した場面になるわけだが、芝居のなかには悲劇のクライマックスの直前に、こういったチャリを入れることがよくある。 *四段目 前半のクライマックスにあたる段。 殿中での刃傷をはたらいた判官は即刻切腹を命じられる。しかし、家老・大星由良之助は主君切腹という大事の場にまだ到着しない。ようやく駆けつけた由良之助に判官がたくしたものとは…。 つづく「城明け渡しの場」では由良之助を演じる役者の肚芸が見どころ。由良之助の思いを派手な動作やセリフなしで表現する。 この場の由良之助をうまく演じられないと「忠臣蔵」の芝居全体が台無しになってしまうほど重要な場面である。 ちなみに、、この段は切腹という厳粛な場面のため、一旦幕があくと観客の途中入場はできない決まりになっている。 *道行旅路の花聟(みちゆきたびじのはなむこ) お軽・勘平のくだりは本来の人形浄瑠璃では三段目の切にあったが、歌舞伎では清元の舞踊に改変され四段目の後に上演される。 主君塩谷判官の大事に駆けつけられなかった勘平が、恋人・お軽の実家である山崎の里へ二人で向かう道のりを踊りで見せる。 *五・六段目 忠臣蔵全段の中でもっとも上演回数が多い、人気演目。 お家の一大事の時、恋人と逢引きしていた早野勘平は、今、その恋人お軽の実家、山崎の里に身をよせ、狩人暮らしをしています。 いつか主君の仇を討ちたいと、深く心に秘めていますが、仇討ちするには、まず軍資金が必要だと考えていた折、ある雨のそぼ降る夜に猟に出たとき、昔の同僚に出会い、密かに仇討ち計画が進行していることを知る。 同僚と別れた勘平は、いい獲物のイノシシを見つける。 ちょうど同じ時、勘平の舅・与市兵衛(お軽の実父)が、街道沿いの稲むら(刈りとった稲の束を干しているもの)のもとで雨宿り。与市兵衛は、勘平のために軍資金を作ろうと、勘平にはナイショでお軽を売って、大金を懐に帰ってきたところだった。 突然、稲むらの奥からにゅっと手が出て、与市兵衛を刺し殺す。強盗殺人の犯人は、斧定九郎(おのさだくろう)という浪人者。 そこへ、勘平が狙っていたイノシシが駆けてくる。勘平は、鉄砲で狙いを定めて撃ち抜くが、暗闇の中、しとめた獲物をさぐってみると…、それは人間だった。 大変なことをした!大丈夫か!とその懐をさわると、縞の財布に五十両という大金。 悪いこととは知りながら、血に染まった財布を持ち逃げる。 妻は売られ先に連れ去られ、義父の死体はかつぎこまれ、義母には親殺しと責立てられ、やってきた同僚にはあきれられ、あげくの果てに、こんな人非人は仇討ちする資格がないと言い渡され…。打ちのめされた勘平は切腹を決意する。 だが、腹を切ったとたん、勘平の無実が証明されるが、時すでに遅し。 赤穂浪士の連名書に血判し、息を引き取るのだった。 |